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「ことば」の世界
最近「あまちゃん」に代表されるように、各地の方言を使ったドラマや映画が
大ヒットすることがあります。一方で会議やビジネスの現場、または文章を作成
するときなど公式の場では、やはり「標準語」あるいは「共通語」を使用するという方が
多いのではないでしょうか。この共通語と標準語というのは一見同じような意味合いで
使われていることが多いと思われがちですが、実はこのふたつはしっかりと区別
されています。
共通語とは実際に私達が普段の生活の中で使っている言葉であり、標準語は
あくまで言葉の理想系とされている言葉のことを意味します。ですので、日頃私たちが
全国的に通用する言葉として使っているのが、共通語ということになります。
共通語は人々とのコミュニケーションの中でできあがっていったものであるのに対し、
標準語は例えば国語のテストなどで、表現の模範的な回答としての言葉を意味し、
画一的に作られていった言葉なのです。これが、共通語と標準語の決定的な違いと
なります。
日本で「標準語」が言語として成立したのは、明治中期から昭和前期にかけての
期間です。当時の言文一致運動が活発になり、主に東京山の手の教養層が使用
する言葉(山の手言葉)をベースに標準語として統一し、方言を追放しようという
試みが推し進められていました。
しかしながら第2次世界大戦以後はこの政策は行われなくなり、各地の方言を
見直す動きが現れました。国家が日本語を標準としてひとくくりにすることに否定的
な考えが生まれるようになった中で登場したのが「共通語」という用語です。
やがて「標準語」は「共通語」と言い換えられるようになり、日常会話において
「標準語」という用語が今でも使用さていると思われているのはその当時の名残
なのです。厳密に言えば標準語と東京の言葉そのものは異なりますが、東京の
言葉(東京方言)イコール標準語とすることが、歴史的に暗黙の了解となっている
からです。
日本という狭い島国でも、多くの方言が存在しています。そして今では方言の
違いを超えて、誰でも共通に理解しあえる言葉の使い方を探すようになりました。
現に「同じ」という意味で「一緒」や、「まったり」「水くさい」などの関西弁が、いつの
間にか共通語として使用されているという事実もあります。
各方言にはそれぞれの旋律や韻があり、それ自体はひとつひとつがとても美しい
ものです。「あまちゃん」などで方言が注目されてきているのは、新たな共通語の
発展の兆し。標準語という窮屈な枠組みから解き放たれた「ことば」は、メディアを
通じて新たな世界を切り開いていくのではないでしょうか。
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