「輝く今日を見つめて」2015.5.27

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予防的切除
がんの可能性を遺伝子で調べて発症前に切除する新治療法「予防的切除」は、
米国女優が卵巣と卵管摘出手術を行い、その数年前にも乳腺を切除したことで
話題となりました。
ご存知の方も多いかと思いますが、彼女はこの2つのがんを発症したわけ
ではありませんでした。手術に踏み切ったきっかけは遺伝子検査です。BRCAと
いう遺伝子に変異があり「乳がん発症リスクが87%、卵巣がん発症リスクが
50%」であるということが検査で判明し、祖母、叔母もがんで亡くしており「が
ん家系」であったことも彼女が「予防的切除」を決断したきっかけと
なりました。
 
BRCAとは、細胞の中のDNAにできた傷を修復する機能を持つ遺伝子です。
人間は生活の中で、紫外線や宇宙線、レントゲンを撮れば放射線を浴び、DNAは
絶えず傷を受けています。BRCAの異常を両親から受け継ぐと、修復が不十分と
なりがん発症につながります。
人気女優の行動は大きな反響を呼びましたが、米国ではすでに予防的切除は
一般的に行われています。日本でも今後も広がる可能性はありますが、
まだ課題が多いのも事実です。現在、国内でも遺伝子検査を受けられる病院や
機関が増えつつありますが、検査結果とともに患者と対応を話し合う遺伝
カウンセラーがまだ少ないそうです。
 
医師でなくても認定される遺伝カウンセラーは米国では3千万人以上ですが、
日本はまだ161人しかいません。患者はカウンセラーの助言のもと、まだがん
発症前の段階で手術するか否かの選択をします、医学的な判断も重要ですが、
遺伝子変異があることを家族にどう伝えるか、精神面も支えることが重要です。
社会福祉士でも認定されますが、責務は重くなります。
 
そして予防的切除は検査費用もかかります。検査費は約25万円。カウンセ
リング料も30分1?2万円程度です。切除費用も予防では全額自費診療となり、
入院費用などを医療保険から支払う「先進医療制度」に申請する計画もあり
ますが、まだ具体的な見通しはついていません。
 
予防的切除は全ての人にベストな治療法というわけではありません。
医師も気づかないうちに進行する場合もあるので、切除の選択もありますが、
切除せずに検査を定期的に受けるという治療を同時に示すことが必要です。
できるだけ正確な情報のもとで、最後に判断するのは本人ということですね。
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