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原油と株の繋がり
年初からの世界同時株安の一因としてオイルマネーの縮小や逆流が指摘
されています。オイルマネーを「石油・天然ガス代金を原資とする政府系
ファンド(SWF)の運用資産」と定義すると、米調査会社SWFインスティ
チュートの推計でその額は、日本のGDPに匹敵する約4兆ドルに上ります。
その内の2.2兆ドルはアラブ首長国連邦のアブダビ投資庁(ADIA)、
サウジアラビア通貨庁(SAMA)、クウェート投資庁(KIA)、カタール投資庁
(QIA)の四つのファンドが占めています。
世界の富が中東湾岸国のSWFに集まった背景は言うまでもなく原油高と
それに伴う経常黒字の拡大です。原油価格が高騰し始めた2005年ごろから
経常黒字幅は大きく拡大し、12年には世界経済の2%を占めるに過ぎない
湾岸産油国が、世界全体のなんと約4割(3950億ドル)を稼ぎ出しました。
その結果、自国通貨に上昇圧力がかかり、自国通貨を売って他国通貨を
買うという為替介入を行いました。通常は中央銀行を通じて行いますが、
湾岸産油国では実質SWFがその役割を担っているため、外貨準備ではなく
SWFの資産が増加。つまり、SWFが外国資産を買っていた事が株高の要因と
なりました。
しかし、原油価格の暴落で、流れが全く逆になりました。そのため、SWFは
海外資産を売却。それが今年の世界同時株安の一因です。現在は株価も落ち
着いていますが、原油が上昇に転じなければ、再び対外資産売却に踏み切り、
再度株価は売られる事になりそうです。
現在オイルマネーの恩恵を一番受けていたサウジが国債発行に踏み切り
ました。湾岸産油国のSWFは前述の為替安定化のほか、政府が財政赤字に
陥った際にそれを補填する役割を担っています。
つまり、サウジは財政赤字が続くとSWFは資産売却を続けてきます。しかも、
そういった状況を察知したファンドがサウジの通貨リヤルを売ってくるので
あれば、通貨リヤルが暴落します。そうなれば、多くの生活必需品を輸入に
頼るサウジにとって、輸入物価の高騰を意味します。それは、サウジにとっては
死活問題です。
もちろん原油価格が元に戻ればそういった事態は避けられますが、そのための
減産というカードを切るのかに注目が集まります。そうしなければ、今年初めの
ような株安をまた警戒しなければいけません。
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