「輝く今日を見つめて」2017.11.24

——————————————————————————————-
NHK連続ドラマ(わろてんか)
吉本せい
 1889年12月5日、兵庫県明石市で12人兄弟の3女として生まれました。義務教育
の尋常高等小学校4年を終えると、船場に奉公に出されます。当時の平均的家庭
の姿でしょう。20歳の時、荒物問屋に嫁ぎます。その頃は日露戦争のバブルが弾
け、日本は不景気。嫁ぎ先の「箸吉」も傾いていました。ところが、主人の吉兵
衛は商売そっちのけで、好きな芸能三昧で遊んでばかり。

 1912年、吉兵衛の芸能好きが縁で天満の第二文芸館を買い取り、興業を始めま
した。これが吉本興業の起こりです。翌13年に吉本興業部を設立します。

 蒸し暑い夏でも、寄席の入場料収入のために客席はぎゅうぎゅう詰め。汗を拭
きながら外に出るお客さんを見て、物販を思いつきます。さっそく水飴をお湯で
溶き生姜の搾り汁を加えた「冷やし飴」を仕入れて売り出します。また、興業主
にもかかわらず、客席の整理、芸人の支度を手伝い、小さな事にも気配りをしま
す。芸人達はその気遣いに感心し、より良い芸を見せることで恩返ししようとし
たそうです。

 1924年、吉兵衛が亡くなってしまいました。せいは実弟の林正之助と弘高を大
阪に呼び寄せ、仕事を手伝わせます。時は大正から昭和になろうという頃、新し
いお笑いを模索していたところ、正之助が「万歳」に目をつけます。
 2人組で鼓を手に、歌舞伎のパロディや小咄を演じる、本来は祝い事で行われ
るものでした。この万歳を変えたのがエンタツ、アチャコ。和装をやめ、スーツ
で、歌舞伎のパロディはやめ、高座では、君、僕と呼び合う。観客に受け始める
と、落語から転向するものも出て来ました。古くさいのと違って、あのインテリ
万歳がおもしろいらしいで、と次第に人気を博します。そして吉本興業の主力が
落語から万歳に切り替わり、名前も万歳では古臭い、音は残して字を当てまし
た。「漫才」誕生です。

 最後は通天閣をも買収した、吉本せい。1950年3月14日、60歳で亡くなりまし
た。彼女をモデルとしたNHK連続テレビ小説「わろてんか」が10月2日より放映さ
れています。ヒロインは葵わかな。兵頭大樹、藤井隆、内場勝則など吉本の芸人
も出演しています。
—————————————————————————————–