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究極の資源循環社会へ
日本では、毎日一人当たり1kgのごみを出しており、年間では一家庭当たり
1?2tのごみが出ると言われています。ごみ焼却量は、欧州の環境先進国の10倍
以上で、ダイオキシン排出量も世界一です。ごみの量は燃やすことで減ります
が、根本的な解決になりません。そこで、積水化学工業はごみをまるごとエタ
ノールに変換する生産技術の開発に世界で初めて成功しました。
その技術とは、ごみを蒸し焼きにして、どんなごみでも一酸化炭素と水素ガス
に分解するガス化技術です。ガスの原料となるごみを収集し、ガスの生成技術を
用いながら、余計な成分を除去・精製し、水素と一酸化炭素に分解します。そし
て、そのガスを微生物の力でエタノールに変換させるのです。
日本では現在、廃棄される可燃性のごみが年間6000万トンあり、エネルギー換
算しますと200兆キロカロリーにも達します。この量は、日本でプラスチック素
材を生産するのに用いられる化石資源(年間約3,000万トン、約150兆キロカロ
リー)に比べて十分に大きな量であるにも関わらず、その再利用は一部に留ま
り、多くは焼却や埋め立て処分されているのが現状でした。そこで、上記の技術
を活用することで、国内のプラスチック需要を満たすことが理論的に可能になり
ました。
以前から、農水省が支援をし、主に農産廃棄物からエタノールを発酵生産する
パイロットプラントが作られていますが、実用化にはコストの問題があり、ほと
んど事業化に至っていないのが現状でした。しかし、積水化学工業は、埼玉県内
で2014年から年間20klのエタノールを生産できるパイロット工場を稼動し、現在
ではJAAS規格の高品質エタノールを1L当たり90円以下という低コストでの生産に
成功しています。その上、分析によりますと、焼却するときの石油代もなくなる
ために、二酸化炭素排出量を135%も削減することができるとも言われていま
す。
積水化学工業は、今年から10分の1のスケールで実証プラントを稼動させ、
2020年に本格商業化に乗り出す予定です。石油化学製品で溢れかえる日本で本格
的にこの技術が使用されることになれば、温暖化ガスの排出など環境負担の軽減
や原料の自給率向上にも繋がります。都市廃棄物排出量が最も多い米国と中国で
は、未だにほとんどのごみが埋め立てて処理されていますが、この技術が世界各
国に広まれば、日本が再び躍進するのではないでしょうか。
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