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何はともあれ、若者たち大多数の日本国民にとって、大東亜戦争は正義の戦「聖戦」であった。聖戦の象徴は天皇である。軍人たる者、天皇陛下のために死す――というのは、国のため、家族を守るために死すことと同じ意味であった。
そして死ねば靖国神社に祀られる――というのも、軍人たちの心の支えであった。戦死は単なる死ではない。国家によって神として祀られ、永遠に栄誉を讃えられる、英雄的行為の結果なのである。
「死んだら靖国で会おう」
この合言葉は、ただの気休めや慰めではなく、死を恐れず敵に立ち向かう、闘争心の最後の拠り所だったのだ。