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スーパー買う「すき家」の深慮―顧客との接点近さ競う(経営の視点)
2013/10/21 日本経済新聞
・牛丼最大手の「すき家」を運営するゼンショーホールディングスがスーパー
買収に積極的だ。2012年11月に首都圏の中堅、マルヤを買収したのを
手始めに13年10月にマルエイ(千葉県市原市)を、11月には栃木県南
部を地盤とする山口本店(足利市)を傘下におさめる。ゼンショーのスーパ
ーは約60店に達する見通しだ。
・牛丼は吉野家HDが4月に並盛りを280円に値下げするなど競争は激化し、
すき家の既存店売上高はマイナスが続いている。だが同社は牛丼の落ち込み
をカバーするための目先のM&A(合併・買収)戦略ではないと強調する。
・ゼンショーHDの小川賢太郎社長は「世界中に食のインフラを作ることが使
命」と話す。原材料の調達から製造・物流・小売りまで一貫したサプライチ
ェーン(供給網)作りに力を入れ、北海道の直営農場で約1000頭の牛を
肥育し、一部の農産物で実験栽培を始めた。現時点で食材は外部仕入れが大
半だが、総合的なフード企業への脱皮が目標。牛丼はあくまで販路の一つに
すぎず、外食より利用頻度が多いスーパー買収で「顧客との接点を広げる」
(同社幹部)。
・高齢化が進む中、インターネットが普及し、店舗で商品を購入する動きは鈍
くなる。このため小売りや外食産業では消費者にいかに接近し、囲い込むか
が成長へのカギを握る。こうした流れに沿った企業戦略が着実に広がってい
る。
・大阪を中心に91店のスーパーを展開するイズミヤはファミリーマートと組
み、29日にコンビニエンスストアとスーパーを融合した店舗展開を始める。
スーパーが得意とする出来たての総菜や生鮮品に、サービスやファストフー
ドなどコンビニの強みを加えた実験的な店作りだ。
・スーパーの商圏は半径2キロだが、コンビニは半分以下の500メートル。
顧客との距離を縮めるとともに、「他社にない店作りで同質化競争から距離
を置く」(イズミヤ)。一方、ファミマは12年に食の宅配会社を買収。さ
らに消費者への接近をはかっている。今や店舗ではなく、玄関先での顧客争
奪戦が始まっている。
・都心への人口集中で郊外型ビジネスにも変化が出ている。世界最大手の家具
チェーン、イケアは郊外型店舗を展開してきたが、日本で世界初の駅前出店
を始める。14年に仙台市、東京都立川市、その後は広島市だ。「日本の実
情に応じて出店すれば、成長は十分に可能」(イケア・ジャパン幹部)と陣
を張る。
・ネットも競合が激しく、ひと工夫したアプローチが求められている。12年
12月からスタートした東急ハンズのネットストア。商品在庫量がすべて分
かるだけでなく、「今、コレ売れました」と各店で売れた商品がリアルタイ
ムで画面上に流れていく。ライブ感は利用者を引き寄せ、アクセス数も上が
っている。
・デジタルサービスに詳しい電通のプラットフォーム・ビジネス局開発部の上
原拓真研究員は「ネットも顧客心理にまで入り込んだ内容でないと生き残れ
ない」と指摘する。消費増税で顧客の目も厳しくなる。規模と機微を追求す
る経営マインドが欠かせない。
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