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高齢者の住まい確保
平成26年6月、参議院本会議で、平成27年度からの介護保険制度の改正を
含む「地域医療・介護総合確保推進法」が与党の賛成多数で可決・成立しました。
既に社会保障審議会・介護給付費分科会が開かれていますが、具体的な介護
報酬・運営基準などに向けた議論が加速することになります。今回注目したい
のは、分科会における個々のサービスの本格的な議論に入る前に、「高齢者の
住まい」が一大テーマとして掲げられたことです。「住まい」とうたってはいますが、
実質的には「介護施設に代わる受け皿」のニーズ拡大が背景にあることは
間違いないです。
病院はもとより介護老人保健施設は在宅復帰機能が強化され、特養の利用で、
新たに入所する人は原則、介護の必要度(要介護度)が要介護3以上に限定
されます。現在は要介護1?5が申し込めますが、入所希望者が多いのに施設
数は足りないため、自宅で暮らすのが難しい中重度の人を優先します。
特養の待機者は、今年3月の全国集計で約52万4千人。この内、要介護
3以上の人は約34万5千人と全体の3分の2を占めます。こうした流れに、同居
家族の高齢化や独居世帯の増加といった環境要因が加わってきますと、「住まいに
介護サービスがセットされている」という機能の存在が重みをおびてきます。
問題は、供給以上に需要が高まることにより、市場原理の常として入居者側の
立場がどうしても弱くなりがちになることです。いわゆる介護サービスがセット化
された住まいといえば、少し前までは有料老人ホームがもっとも大きな存在でした。
国は利用者保護の強化として、前払金の保全措置や入居者の処遇改善・保護を
進めるべく、改善命令などを強化してきました。又、年金詐取などの貧困ビジネス
につながりかねない無届け老人ホームなどの実態把握にも力を入れています。
そして、平成23年10月からは、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)の
登録制度もスタートしています。これにより、安価で良質な賃貸住宅の確保と共に、
安否確認や見守りサービスをセットにすることで入居者の安心・安全を高めると
いうビジョンがあるわけです。
しかし、このサ高住についても、併設するサービス拠点を利用すると、サ高住の
家賃を割引するなどの一種の囲い込みが行われているケースもあり、本人の意に
沿わないサービス利用を誘導する役割を担っているという可能性も水面下で
広がっているわけです。
こうした利用者の意に沿わない囲い込みやサービス誘導をどう防いでいくかという
ことと、入居者の権利を保護するための監査体制などについて、第三者機関の
設置などを含めた議論が望まれているところです。
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