「輝く今日を見つめて」2015.3.3

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「原油安VS円安の岐路」
 日銀の黒田東彦総裁は1月21日の金融政策決定会合後の記者会見で
「消費者物価については、原油価格の大幅下落の影響から、2015年度に
かけて下振れている」と原油安が消費者物価の押し下げ要因となっている
ことを強調しました。
 本来、物価が下がるのであれば消費者には喜ばしいことですが、実際は
昨年末から今年にかけて、食料品を中心に値上げが相次いでいます。
 
 例えば、大手牛丼チェーンの吉野家は昨年12月に牛丼の値段を300円から
380円に変更、1月には日清食品も即席麺などの価格を5%程度値上げして
います。原油安は本来、輸送費や電気料金の値下げなど、直接原油を使用
しない企業にとっても、コストダウンなどプラス効果をもたらしますが、
原油価格の下落局面にもかかわらず値上げの動きになっているのが現状です。
 
 これは、ご存知のように円安による輸入原料の高騰が原因です。2014年の
為替相場を見ますと、夏場までは100?103円の横ばいで推移していましたが、
夏場以降は急速に円安が進行、1?7月と12月の相場を比較しますと約15%も
円安に振れています。
 原油安による物価の下押し効果が、円安による物価押し上げ効果を上回る
のは主にエネルギー関連(石油製品・電力・ガス・水道)と運輸となっています。
確かに、原油価格が下がり始めてから、ガソリン価格や燃油サーチャージは
下落傾向にあります。
 
 一方、食料品やその他の工業製品(通信機・衣料品等)、サービスでは
原油安によって上昇幅は抑制されるものの、円安による物価押し上げ効果の
方が大きくなっています。米国産牛肉を使用する吉野家にも、円安のコスト
アップが圧し掛かり、値上げにつながったというわけです。
 
 消費者物価全体では、石油や電力における下押し効果が大きいため、
原油安の恩恵が円安を上回りますが、原油安が物価を下押しするのは、
ガソリン等の燃料が大半で、食料品など大半の一般消費財においては、
むしろ値上げ傾向が強いことが窺えます。
 今後、更なる大幅な原油価格の下落がない限り、消費者が受ける
メリットは限定的となりそうです。
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