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日本国の100兆円夢計画
先月9日、海洋研究開発機構は南鳥島の南西にある水深5,500mを
超える海山の斜面において、コバルトリッチクラストを採取したと発表しました。
コバルトリッチクラストとはコバルトやニッケル、白金、そしてレアアース
などを多量に含んだ岩石のことで、厚さ数cmのものが海山を覆う形で太平洋に
広がっていることが分かっています。以前は水深2,000mまでしかコバルトリッ
チクラストは確認されていませんでした。その時点で約2.2億トンのレアアース
を含む金属があり、経済効果は100兆円規模と言われていましたので、今回の発
見により経済効果は大きく増幅しそうです。
金属資源の大半を輸入に頼っている日本にとってこの発見は朗報です。元々、
海底鉱山の資源開発は欧州やアジアの国々でも注目されていました。しかし、
海外領土を除く自国の大陸棚にコバルトリッチクラストのような海底資源を持つ
国は日本しかなく、海洋資源開発では日本が世界をリードしています。
2009年に日本は「海洋エネルギー10ヶ年計画」を制定、技術開発に乗り出しま
す。その結果、沖縄海域で鉱量370万トンの中規模鉱床が見つかりました。
ただ、実際に民間が起業して採算を取ろうと思うと、最低でもこの10倍、
3700万トンは鉱量が必要です。そこで政府は最新の海洋探査機を開発し、大陸棚
を効率良く探査することを目的として、「海のジパング計画」を現在進めていま
す。2014年から始まったこの計画は5年間で約300億円を投じる見通しです。
例えばレアアースは中国が世界の生産の9割を占めています。そのため、2010
年に尖閣諸島沖で起きた中国漁船との衝突事故を機に、中国がレアアースの対日
輸出を停止し、価格を約10倍に釣り上げたことは記憶に新しいことです。
また白金に関しましても、主産国南アフリカの政治的な不安定さが価格を左右
することが多分にあります。このように供給リスクの高い資源を自国で生産でき
ることは市場の安定化にも繋がります。
レアアースや貴金属は日本の先端技術は産業を支える貴重な資源ですが、
理論的にはこれらを自国の生産で賄うことが可能です。「海のジパング計画」
として開発技術を輸出することも計画されています。海洋資源の研究・開発は
国家百年の計であり、今後の進展に期待が寄せられます。
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